[Si新書]本当は面白い数学の話
確率がわかればイカサマを見抜ける? 紙を100回折ると宇宙の果てまで届く?
数学はつまらないから、私はいいや。そう思っていませんか?
けれど、そこに秘められた「考え方」、そして「使われ方」は、実に面白いものです。
本書では、それらを興味深い逸話や身近な例をまじえて、ご紹介します。
不思議な数の意昧から、公式の暗記よりずっと楽しい図形の見方、確率・統計を使って賢く生きる知恵、指数・対数と人のかかわり、微分・積分で可能になることまで。
「むずかしいもの、面倒なもの」を数学で「かんたんに解決」する世界をのぞいてみませんか。
■目次:
第1章 目に見えないものを見せる「数」の本質
第2章 「カバリエリの方法」で面積・体積を見ると様変わり!
第3章 世界を解明する? 方程式と因数分解の謎
第4章 確率と統計さえわかれば、イカサマや八百長も見抜ける
第5章 天文学者のコンピュータだった? 「指数と対数」
第6章 世界はサインカーブでできている!
第7章 微分・積分を知ると、「面積から静止衛星の軌道まで」計算できる?
-「はじめに」より-
2018年1月、「富士山の体積を量るアイデア募集」という広告を見かけました。
実は、筆者はその30年も前に、ある編集者から「標高1000m地点を裾野として、富士山の体積を計算してください」と頼まれたことがあったのです。
一見、かんたんそうですが、富士山は円すいのような計算しやすい形ではありませんから、途方にくれた記憶があります。
結局、高さ500 m ごとに等高線の形をトレースし、ゴムシートをその形に切り抜いて重さを量り、その重さから対応する等高線の囲む面積を算出し、体積計算の手がかりとしました。
この計算法は、いわば「面積・体積を重さに変換する」という方法です。
実は本書で紹介する、カバリエリの酒樽を輪切りにする計算法もこれと同じで、その少し先まで行くと、積分法まで見えてきます。
これと似たことが、最近、ツイッター上で話題になりました。
あるお客が大量の1円玉の入った袋をレストランのレジにもってきて、「数えろ!」と要求したというのです。
そこで店員さんが”神対応”。
その方法とは、1枚1枚数えず、「1円玉全部の重さを量って枚数を推定した」ということです。
1円玉は1枚1gですから、3kgなら3000枚です。
この店員さんのアイデアは、筆者が等高線の面積・体積を別のものに置き換えて算出した方法と、考え方が同じです。
数学というのは、本来、「むずかしいもの、面倒なものに関して、頭を使ってかんたんに解決できないものか?」と考えるための学問といえます。
最初の話で、「富士山の体積なんてわかっても、何の役にも立たない。だから数学は役立たない」と言う人がいますが、そうでしょうか。
大量の1円硬貨を出されて困ったとき、複雑な形状の物体の体積算出で途方にくれたとき、「輪切りにする手がある」「重さを量れば解決する!」と気づけば問題解決に大きく近づくことでしょう。
仕事や社会生活では、さまざまな難題に直面します。
そんなとき、ちょっと現実離れしているように見える「数学の思考法や論理」が大いに役立ち、思いもしない解決策につながることが多いのです。
数学は、賢く生きるための知恵、思考法だと言えるでしょう。(後略)
2018年2月 岡部恒治