
「こっちの飲み会は出町柳かぁ……。近いけど、店が狭いと逃げ場がないかな……」
あれ?
今、逃げ場って言ったな、この子……。
何なの⁉ そのサークルの会長でも暗殺する予定なの!? アサシンなの!?

「日之出君、かけがえのないこの時間を価値あるものにしよう! これはおおいなるチャン スだ!」
そう言われると、ちょっとうれしくなってくる。我ながら単純だ。
「私と付き合ってくれ」
さらりと、何の恥じらいもなく――高階さんは告白と形容して問題のないことを口にした。

「じゃ……下の名前って、何だったっけ……?」
「 祭利よ」
お祭りでおなか出して踊っている狸の図が浮かんだ。たしかにこの苗字でこの名前は無意味なコンボになってるな……。
「ま、祭利……。これでいいか……?」
「うん、いいわよ、 日之出」
すぐさま、祭利はドヤ顔して言った。今度は俺が不意打ちを 喰らった。
「まさか、俺の名前を覚えてるとは……」
「日之出なんてかっこいい名前なら覚えるわよ」
でも、そこであわてて、こう訂正した。
「え、ええと……かっこいいって言うのは名前のことだから……」

――と、彩乃の左手が俺の肩に伸びてきた。
そのまま、ぎゅっと彩乃が密着してくる。
髪が俺の頬に当たる。
「菅原先生、彼女、い・た・こ・と・あ・り・ま・す?」
ぼそぼそと彩乃が俺の耳元で囁く。
ぞくぞくっと俺の体に電気のようなものが走る。
「彩乃、彼女になってあげてもいいですよ?」
高階紅礼羽(たかしな・くれは)

20歳のニート。
菅原日之出(すがわら・ひので)

19歳の京都の学生。
狸林祭利(たぬきばやし・まつり)

日之出と同じサークルの学生。
日南瀬彩乃(ひなたせ・あやの)

日之出が家庭教師をしているJK。