
朝、なかなか起きてこない家族、中でも寝坊が多い息子のために作りはじめたスープが365日毎朝続いて、4年とちょっと。これまでにわが家の食卓に登場したスープは、およそ1500にもおよぶ数になりました。「どうしてそんなに次々とスープを思い付くの?」と驚かれます。この本にはそんな問いに答えるような、アイデアのかけらをたくさんちりばめてあります。毎朝を切り取ったような、小さな風景が心に焼き付いています。葉付き新にんじんの、みずみずしい緑とオレンジ色、家族が集まって食べたポタージュの大きな鍋、田舎でもらった泥付きたけのこ、ハーブにとまったてんとう虫。
レンズ豆とごぼう

水に浸しておかなくても使えるレンズ豆は、朝のスープにぴったり。相性のよいごぼうを合わせて、豆ライフをはじめましょう。
わが家の味噌汁

ほっとする味だけれど、毎日かわりばえがしないなあと感じることがあります。今朝はいつも作る味噌汁で、小さな冒険を。だしや味噌はふだんと同じで、すりごまを加えた味噌汁には深いコクが、胡椒をふった味噌汁には力強さが加わります。ささやかなひと手間で大きな変化が起こせる、ということだけでも発見です。
まな板いらずでおしゃれなすり流し

すり流し、という和の料理法があります。すり鉢で魚介や野菜をすって、だしでのばした上品な椀物。要するに、道具とだしが和風になったポタージュなのですが、これをもっともっと簡単にできないだろうか、と思って試したのが、おろし金を使う方法です。シンプルな酒粕入りの味噌汁の中に、じゃがいもをおろし金で直接すり入れて、さっと加熱すれば出来上がり。
焦がし野菜の香りがおいしい記憶を刺激する

焼き野菜のスープを口にするたび、なぜか記憶をさかのぼり、たき火のある風景が浮かびます。煮たり蒸したり炒めたりするところからスタートするスープが多い中、たまには「焼く」というところからはじめるスープも、野趣にあふれて、新鮮ではないでしょうか。しっかり野菜に焦げ目をつけると、他の方法で野菜を使うときよりも濃いおいしさを感じます。
童話に出てくるスープのお話

『3びきのくま』という、ロシアの童話を知っていますか?森に迷い込んだ女の子がくまの家に忍び込み、テーブルに用意されていたスープを食べてしまうというシーンがあります。童話の世界のスープは想像でしか味わうことはできません。その空腹を満たす温かいスープが、おいしそうなのです。が、くまのスープは、こんな感じだったのではないかな、と思いつつ作ってみました。
チリコンカン

朝から夜へとバトンを渡すように、スープを作ってもいいのです。たとえば朝に、たまねぎ、牛肉、トマトで簡単なビーフトマトスープを作りおきして、夜はこれに、豆やじゃがいもなど、ボリュームを出す具材を加えて、しっかりしたチリコンカンに。