
戦塵外史 野を馳せる風のごとく
国がひとつ、死に瀕していた。
「面白かったな」
というのが、国の最高権力者アバール大公の感想である。
無骨な漢達がしのぎを削る!
戦塵外史シリーズ第一弾!
「どけえいっ」
一陣の風のごとく戦場を駆け抜ける赤毛の巨馬。騎乗する男が振るうのは、一スタルト(約三・六メートル)はあろうかという“削り出し”の大槍だ。それに触れた五人の兵士の首が一度に飛ぶ。人間業ではない。
彼の名はダリウス。今は亡きアバール大公国の世継ぎである。その肉体も、精神も、強さも、全てが桁外れの男である。
「兵を挙げて頂きたく存じます」
彼の内縁の妻アスティアが連れてきたのは、亡国の皇女フィアナだった。生ぬるい平和に退屈していたダリウスは即決した。たった五人で一国を奪う……。こんな愉快な話が他にあるだろうか。
「ひとつ派手にやろうじゃないか!」