
戦塵外史 五 戦士の法
旅の理由は説明できない。
そんなシャールの事情をまったく気にすることなく、その大男は雇われた。
はたきのような頭。
酷く不機嫌な顔つき。
そしてまったくの無口。
秘密を抱える少女(シャール)と、物言わぬ大男。
旅の果てに2人を待つものとは!
男の武骨な斬撃が、追っ手の生命を頭蓋ごと押し潰す。
次々と。
なんの躊躇いもなく。
男の桁外れの強さに、まだ10歳の少女は息を呑んだ。
少女は男を「大男(ガーヴ)」と呼び、男は少女を「小娘(シャール)」と呼んだ。
お互いの素性も、名前すらも判らない。
いや、むしろそれは邪魔になるだけだ。
用心棒と、その雇い主。その関係だけがあればいい。
男は喋らない。
頑強な筋肉で覆われた巨躯が、ただ分厚い足音をシャールの後ろで響かせるばかりだ。
この男とならもしや。
そう、シャールが考えた時、一目で手練れと判る、細身の双剣使いが彼らの行く手をゆらりと阻んだ……。
戦場の匂いを漂わせて「戦塵外史」第5弾、ついに登場!