「ベイズ統計」は、英国の数学者トーマス・ベイズ(1702~1761年)が提唱した統計で、「主観的な確率」も柔軟に利用できることが特徴です。この柔軟性が逆に多くの科学者に好まれず、200年以上もの長い年月、冬の時代を迎えることになります。しかし、時代はベイズ統計を忘れていませんでした。むしろ時代が進むにつれ、その柔軟性により活用の幅が広がっていきました。現代におけるベイズ統計の応用は、スパムメールの判定からビッグデータの分析まで、枚挙にいとまがありません。私たちが普段接する従来の統計学は「データ」が必要です。データがない状態では「議論できない」のです。これに対してベイズ統計は、事前のデータがない状態でも、仮定しつつ議論を進め、情報を得ながら確率を更新していける強みがあります。また、ベイズ統計は、結果から原因、未来から過去を探る際にも活躍します。つまり、ベイズ統計は歴史的にも計算の上でも、「未来が過去をつくる」分野なのです。このような冬の時代を経緯に持つ学術分野は、何もベイズ統計だけではありません。近年急激に台頭してきたAI(Artificial Intelligence:人工知能)も、かつて2度の冬の時代を経て、輝かしい現在を迎えています。
■第1章 「ベイズ統計」って何だろう?
●基礎知識1 「統計」って何だろう?
●基礎知識2 「ベイズ統計」は変化する確率を扱う
●基礎知識3 統計の用語
●基礎知識4 統計の「最前線」はコンビニ!
●基礎知識5 「統計の基礎」はすでに身についている?
●基礎知識6 データの分類
●基礎知識7 質的データ(数値で測定できないデータ)
●基礎知識8 量的データ(数値で測定できるデータ)
●基礎知識9 「伝統的な統計学」と「ベイズ統計」の違い
●基礎知識10 「記述統計」と「推計統計」
●基礎知識11 代表値と散布度
●基礎知識12 代表値は「最大値・最小値」を調べるところから始める
●基礎知識13 代表値の王様「平均」を知ろう
●基礎知識14 平均が機能しないときは「中央値」
●基礎知識15 平均の計算で「よくある間違い」とは?
●基礎知識16 外れ値の影響を受けにくい中央値
●基礎知識17 最頻値は「データの多数決」
■第2章 「集合」と「確率」の記号「超」入門
●具体例で「集合」と「確率」の「記号」に慣れよう!
■第3章 「条件付き確率」って何だろう?
●「条件付き確率」だけはしっかり押さえる!
●例題で「条件付き確率」に慣れよう
●条件付き確率の有名な問題① 「3棹のたんす問題」
●条件付き確率の有名な問題② 「帽子をよその家に忘れてしまうK君」の問題
●条件付き確率は「直感」にだまされやすい
●「ベイズの定理」を導く!
●「ベイズの定理」を使って解いてみよう
■第4章 「ベイズの定理」を具体例で理解する
●モンティ・ホール(Monty Hall)問題 ドアを変更したほうがいい? 変更しても同じ?
モンティ・ホール問題の解説①:ドアを変えない場合
モンティ・ホール問題の解説②:ドアを変える場合
「納得できない!」人は「極端な例」で考えてみよう
「モンティ・ホール問題」を数学的に検証する
●「P検査とCウイルス問題」 確率を求めるときは「前提条件」がとても大切
「感度」は「正しく陽性と判定される確率」
「特異度」は「正しく陰性と判定される確率」
●「3囚人問題」 囚人Aは「助かる確率が上がった!」と喜べるか?
事象A:囚人Aが恩赦を受ける場合
事象B:囚人Bが恩赦を受ける場合
事象C:囚人Cが恩赦を受ける場合
Aが恩赦を受けられる確率は3分の1のまま
Cが恩赦を受けられる確率は3分の1から3分の2に上昇
●「飛行機の墜落原因」問題 事故の原因がエンジン故障だった確率は?
■第5章 「とりあえず」からはじめていい「理由不十分の原則」と「ベイズ更新」
●「理由不十分の原則」って何だろう?
●「壺から玉を取り出したら青玉だった」問題 時間の流れが逆になっている場合はどうする?
●確率が次々と更新されていく「ベイズ更新」 刻一刻と変わる状況にも追随できる
ベイズ更新で確率をアップデートする
墜落場所がわからなくても数学的に正しい方法を使う
●なぜ「迷惑メール」だけ狙い撃ちできるのか? 迷惑メールならではの特徴を確率に反映させる