夜の帳が落ちた庭を、淡い白光が照らしている。魔術の光だ、と気づく頃、そこにいる影がぽつぽつと見えてくる。どれもが若い竜だった。歳のほどで言えば、十三歳か、十四歳か ―成体と呼ぶにはまだ早いが、もう子供と呼ぶには小さくもない。そんな年頃の竜たちだ。
彼らは円陣を組むようにして、思い思いの姿勢でくつろいでいる。その中央には笛を奏でる、茶色の髪の青年が立っていた。
竜歌の巫女と二度目の誓い
大切な誓いはね。
違えた時に“呪い”になるの。
これは果たされなかった誓いを巡る
再会と約束の物語。
「私を守ってくださいますか?」
かつて幼き騎士ギルバートと誓った約束は呪いへと変わり、竜歌の巫女は名もなき少女となり再びこの地に生を受けた。
少年に裏切られ、全てを呪いながら生涯を終えたこの世界。十二年の月日が経ち、生まれ変わった少女は奴隷として売られそうになっているところ、青年となった騎士ギルバートに拾われる……それは彼女にとって望まぬ再会。ルゼという名前を与えられ、やがて始まった彼の屋敷でのメイド生活。新鮮な日々、暖かい人たちとの触れ合いと久々に訪れた優しい時間は止まっていたルゼの時間をゆっくりと動かし――。
世界を呪った少女と英雄となった騎士。誓い合った二人が、輪廻を超えて再び巡り合う再会と約束の物語。