TOYOTAビジネス革命
ユーザー・ディーラー・メーカーをつなぐ究極のかんばん方式
金融不況後の景気後退、さらには、米国に端を発したリコール問題で揺れる中、トヨタ自動車は、ITをフル活用し、自動車ビジネスを大きく変える巨大プロジェクトを静かに進めている。
このプロジェクトでは、メーカーは「クルマを作り、ディーラーに卸す」という既存のビジネスモデルを改革し、生産(工場)と流通・販売、そしてアフタービジネスをITシステムで直結。クルマの生産と流通・販売をジャスト・イン・タイムで行うほか、自動車整備・修理ビジネスにおける顧客や車両の管理までも、ITシステムで一本化するという取り組みがなされている。
じつはこのビジネス革命は、2009年にトヨタ自動車の社長に就任した豊田章男が、およそ15年かけて進めてきたプロジェクトなのだ。豊田にとってこれは、トヨタの原点回帰を実現するためのプロジェクトであり、リコール問題で揺れるトヨタの「起死回生のカード」にもなり得るものだ。
本書は、すでにこのシステムを導入している中国(広汽トヨタ)および日本国内での現場取材に加えて、豊田章男社長をはじめとするキーパーソンへの単独インタビューを実施。膨大な関係資料とともに、この巨大プロジェクトの全貌をまとめたものだ。
21世紀のトヨタ生産方式、新たな「かんばん方式」の姿が、ここにある。本書は、自動車ビジネスに関わる人だけでなく、製造・流通・販売・CRMに携わるビジネスパーソンにとって刺激的でヒントに満ちた一冊である。
【目次】
第1章 トヨタのIT戦略を育んだ新社長・豊田章男の狙い
第2章 世界最先端の自動車ビジネスを展開する中国広汽トヨタ
第3章 かんばん方式を顧客の手元まで拡張する「SLIM」
第4章 顧客とのつながりを強化し利益をもたらす「e-CRB」
第5章 GAZOOからG-BOOK/G-Linkへ。進化するトヨタIT戦略
第6章 レクサスを中心に導入が進む国内の状況
第7章 TOYOTAビジネス革命の意義
■著者紹介
神尾 寿(かみお ひさし)
自動車・交通およびITを専門分野とするジャーナリスト。大手携帯電話会社で新ビジネス企画に携わった後に独立し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、国際自動車通信技術展企画委員長なども務める。主な著書は『自動車ITS革命!』(ダイヤモンド社)、『次世代モバイルストラテジー』(ソフトバンク クリエイティブ)など。
レスポンス編集部(http://response.jp/)
1999年に「21世紀のクルマのカギはITや環境、デザイン」という認識のもと、自動車専門ニュースサイトとして誕生。商品、社会、ビジネスの視点による取材を精力的に行っている。1977年生まれの北島友和記者は、テレマティクス、ITS、カーナビなどのIT分野を担当。レスポンスにおける『中国 次世代トヨタ特集』に引き続き、本書の執筆も担当した。