

データの可視化で物事の「本質」が見えてくる!
●ビジュアル化すると地理はもっと楽しくなる
子どものころや学生のころ、社会科や地歴公民の資料集が好きだった人は多いのではないでしょうか。あるいは、都道府県ランキングや「○○県のひみつ」のような、地理に関する雑学ネタならいくらでもお代わりできるとか、なんとなく地図を眺めるだけでうれしくなる――といったライトな地理ファンもたくさんいることでしょう。
筆者は、地理や自然に関するデータをわかりやすく「可視化」することをテーマに活動し、X(旧Twitter)や講演会を通じて、さまざまな作品を世に送り出しています。データ可視化とは、複雑なデータをひと目でわかるように表現することを指していて、一般的に地図やグラフ、チャート、アニメーションなどの表現手法が使われます。
数値や文字の羅列であるデータをビジュアル化することによって物事の全体像を理解できるようになりますし、先入観にとらわれずに物事の本質を認識できるようになるため、ビジネスにおける意思決定の場や、研究における分析や考察の場でよく使われてきました。また近年では、新聞などの報道でも、データをわかりやすく視覚化した記事が増えてきました。
書店の地理コーナーに行くと、作者が主役の本(エッセイや紀行文)や地図が主役の本(ビジュアル解説書)、地域が主役の本(ご当地あるあるネタ)が目に飛び込んできます。しかし「データが主役」×「ビジュアルが多くて読みやすい本」はあまり多くなかったことが、本書を執筆した動機です。あまり専門的にならず、かといって雑学に偏ることなく、ライトな地理ファンから地理学を学ぶ学生、さらには行政や企業の方まで幅広い読者を想定して書きましたので、気軽に手に取っていただければと思います。
■第1章お店を可視化!
1-1「有名チェーン店」が店を出す駅、出さない駅
Column 路線図制作の「裏話」
1-2「うどん文化圏」と「そば文化圏」を可視化してみた
1-3「ラーメン王国」は意外(?)な県だった!
1-4「コンビニ勢力図」から見えてくる意外な「強者」
1-5コンビニと郵便局の立地差から見える企業の論理
1-6スターバックスの「分布図」で見えた意外な場所の出店
1-7「容積率」の可視化で「街のスケール」がわかる!
1-8旅行や出張が楽しくなる街の「昼マップ」と「夜マップ」
Column 容積率と街並み
■第2章お金と住まいを可視化!
2-1マンション価格の可視化でわかる「身もふたもない事実」
2-2マンション価格の可視化で「割安物件」が見えてくる!
2-3「年収700万円」ファミリーが住む街の特徴は?
2-4「年収1,500万円」ファミリーが住む街の特徴は?
2-5テレワークで「地方移住」が進んでいるって本当?
■第3章交通を可視化!
3-1不動産広告には載っていない「改札から改札まで」の所要時間
Column 不動産広告の「電車所要時間」は短すぎる?
3-2アフターコロナ時代、人の流れはどう変わった?
3-3ビッグデータで人々の「お出かけ先」を可視化!
3-4「電車本数」の可視化があぶりだす地方の苦悩
3-5「鉄道」ではなく「飛行機」選びたくなる基準がある?
3-6「鉄道があるからクルマはいらない」は東京だけの現象?
Column おもな交通手段のシェア~主要21都市
3-7主要高速道路の「勢力圏」を可視化してみた
Column すべての道は「大阪」にも通ず?
■第4章さまざまな自然を可視化!
4-1日本列島を「川の流域」で塗り分けてみた
4-2猛暑日が多い街、少ない街には共通点がある?
4-3日本の夏の暑さのレベルは「1994年」から変わった
4-4暖かいイメージの県でも「雪国」だったりする
4-5「きれいな星空」を見られる街をデータで探せ!
Column 夜の明るさに見る世界のいま
4-6「江戸時代」につくられた「緑地」は今でもにぎわう
4-7シミュレーション「首都直下地震が起きたら」①
4-8シミュレーション「首都直下地震が起きたら」②
Column 関東地方は地震の「巣」
4-9「内陸だから地震に強い」とは言い切れないワケ
4-10なぜ「災害予測エリア」の人口が増えている?
Column 水害は増えているのか?
■第5章人口を可視化!
5-1日本人の半分以上は国土のわずか「2.1%」に住んでいる!
Column 「人口密度感」を養うと街をイメージできるようになる
5-2「人が住んでいる場所」を光らせたら意外な場所が明るい!
5-3地域の特徴がわかる「昼夜間人口比率」を可視化
Column 千代田区は治安が悪い……ホントかウソか?
5-4高卒生の「現役進学率」「就職率」は地域差が大きい
5-5県外に出た高卒生は「どこへ行く」のか調べてみた
5-6首都圏に集中している「業界」、集中していない「業界」
5-7あなたの街にはどんな「業界」に勤めている人が多い?
5-8少子化なのに「出生率が回復してきた街」がある!?
Column 発展途上国も出生率が下がり始めている!
5-9「3人以上のきょうだい」が多い街には意外な傾向があった
5-10「年齢中央値」の可視化で「若返った街」を発見!
5-11「共働き」が多い町、「専業主婦」が多い町
■第6章まだまだいろいろ可視化!
6-1「湘南」っていったい、どこからどこまで?
6-2「ちょう(町)」と「まち(町)」の違いから歴史をひも解く
6-3地名で地図を描いたら「地域差」や「流行り廃り」が見えてきた
Column 小海町は『君の名は。』にも出てきた?
Column 民話『鯨の夫婦』が教えてくれること
6-4世界地図で進む「脱・メルカトル図法」