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大阪ことばの謎

金水敏:著者

今日、大阪弁はとても身近なことばである。
大阪出身の人はもちろん、それ以外の出身の人もまた、「知らんけど」「めっちゃ」「わろた」等の大阪弁をごく日常的に使っている。他の都道府県の方言と比較して、大阪弁の存在感はすさまじい。

しかしこれは、歴史的に見ると決して当たり前のこととはいえない。
明治時代の標準語成立以後、各地の方言が急速に弱体化した一方で、大阪弁・関西弁は強烈な「役割語」としてその地位を確立してきた。さらにそこから派生して、さまざまな大阪人ステレオタイプが誕生した。いまなお、大阪弁・関西弁は全国の日本語話者に影響を与え続けている。

私たちはなぜ大阪弁・関西弁的な表現をつい使ってしまうのだろうか?
その問いの先に、私たちのコミュニケーションを背後で支えている感覚が見えてくる。

日本語学の泰斗にして役割語研究の第一人者が、文楽、落語、小説、漫才、マンガ、ドラマ等の幅広い資料を参照しながら、ことばと文化をめぐる謎に正面から挑む。

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【目次】
はじめに

第一章 大阪人のしゃべりはなぜ軽快か
関西弁のリズムとオノマトペ/三島由紀夫の批判/一般オノマトペと詳細オノマトペ/関西人がオノマトペを多用するのはなぜか/繰り返し表現について/「ん」が作るリズム etc.
【コラム1】ちゃうちゃうちゃうんちゃう?

第二章 歌う大阪弁
「○○クン、あそびましょ」/アクセントでバレる「エセ関西弁」/自然とメロディーになる/祇園祭宵宮のローソク売り/テレビCMにあふれる関西アクセント/なぜ関西アクセントはメロディーが豊富なのか etc.
【コラム2】ソースの二度漬け禁止やで

第三章 大阪弁・関西弁はひとつじゃない
万城目学の小説と方言/東日本の「~ない」、西日本の「~ん」、そして関西の「~へん」/関西弁の使用地域/関西弁の基層を作った京都方言/北の地域は別の国/「ほんもの」の大阪弁はあるのか etc.
【コラム3】地震や、揺れてはる

第四章 大阪弁はいつ、どのように生まれたのか
歴史ドラマのうそ/大阪の性格は変わり続けてきた/古代、「大阪」はなかった/大阪弁の基盤ができる/コテコテ大阪弁の完成/語彙から見た大阪弁の変化 etc.
【コラム4】アホちゃいまんねん、パーでんねん

第五章 大阪人は本当にケチか
村上春樹作品と関西弁/「役割語」から見た関西弁キャラ/相田彦一(『SLAM DUNK』)/保科宗四郎(『怪獣8号』)/後藤義雄(『地面師たち』)/平成・令和の関西弁キャラクターの特徴 etc.
【コラム5】「さん」と「はん」

第六章 大阪人のコミュニケーションはどこがちがうのか
おつりは二〇〇万円!/「正しく」も大事だが「楽しく」も大事/ボケとツッコミという文化/大阪の芸能は大阪的コミュニケーションの歴史を映し出す/しゃべくり漫才の発生と展開/大阪人はストリートファイター etc.
【コラム6】「自分」って誰?

第七章 日本語話者はなぜ大阪弁に魅せられるのか
在阪アナウンサーの思い/他方言を受け入れる二つの動機/関西弁取り込みの古層、新層と新古層/大阪弁のポストモダン性/テレビが広めた関西弁「どんくさい」/「知らんけど」はなぜ受けるのか etc.
【コラム7】ゆうた、しもた、こうた、わろた

おわりに

参考文献
資料出典
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定価:1,045円(本体950円+10%税)

書籍情報

  • 発売日:2025年4月30日(水)
  • ISBN:978-4-8156-2471-2
  • サイズ:新書
  • ページ数:256
  • 付録:-

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著者紹介

著者・金水敏

1956年、大阪府生まれ。放送大学大阪学習センター所長、大阪大学名誉教授。東京大学大学院人文科学研究科博士課程退学。大阪女子大学助教授、神戸大学助教授、大阪大学教授等を経て、2022年より現職。博士(文学)。専門は日本語史、役割語(言語のステレオタイプ)研究。日本学士院会員。文化功労者(2023年)。著書に『日本語存在表現の歴史』(ひつじ書房、第25回新村出賞受賞)、『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』『コレモ日本語アルカ?』(以上、岩波現代文庫)、編著に『役割語研究の地平』『役割語研究の展開』(以上、くろしお出版)、「シリーズ日本語史」(全4巻、岩波書店)、『〈役割語〉小辞典』(研究社)、『よくわかる日本語学』(ミネルヴァ書房)などがある。

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