一流の集中力
イチロー、中村俊輔も実践する「本番力」の鍛え方
イチロー、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一、高原直泰、川口能活、井原慎司--数々のアスリートたちの精神面を鍛え上げ、世に送り出したメンタルトレーニングのカリスマが、ここぞという本番で実力を発揮して、必ず結果を残すための集中力の高め方を伝授する。
「メンタル」という言葉が意味するものは何か。モチベーションやリラクゼーションなど、精神を健全な状態に保つ働きはいろいろありますが、そういう一面的な見方だけで語ることはできません。極論すれば、その人自身の考え方、あるいは一人ひとりの生き方そのものが、「メンタル」という言葉に集約されると私は考えています。
ところが人間の「メンタル」は数学のように具体的な答えを示すことができるものではありません。指導者の立場からすると、選手に教えたり、選手を育てたりするのが非常に難しいのが、この分野なのです。そういう思いを私が抱いていたときに、メンタルコーチとして選手たちの精神面の育成に尽力してくださったのが、豊田一成先生でした。
2003年、私は横浜F・マリノスの監督に就任しましたが、すでに豊田先生はメンタルコーチとしてチームを支えていらっしゃいました。
豊田先生には監督の権限も及ばない選手個々の心のあり方や、監督には見せない選手たちの内面的な問題を、非常にきめ細かくコントロールしていただいたと感じています。
F・マリノス監督就任1年目、チームは1stステージと2ndステージを制し、完全優勝を遂げることができました。そのチームの土台である「メンタル」を築いてくれた”精神面の監督”とも言える存在が、日本におけるメンタルトレーニングの第一人者である豊田一成先生だったのです。
――サッカー日本代表前監督・岡田武史
【目次】
●メンタルが充実すればパフォーマンスは飛躍的に向上する
【第1章】集中力の源泉はメンタルにあり
●奇跡を生んだ若きサムライたちの集中力
●集中力とは”その局面に思いを込めて行動する”こと
●”万年3位”の選手が優勝できた理由
●一流アスリートはゴールの先を見ている
●イチローは天才ではない
●心の成長は自分を愛することから始まる
●心を置き去りにした日本の教育環境
●チャンピオンスポーツから導き出された”真実”
●メンタルを磨く意味
【第2章】集中力を発揮するための条件
●目標は4段階で設定する
●目標設定の7つの指針
●ストレスの正体を知る
●心の中にある鏡を磨く
●最初から一流の選手はいない
●心が成長する仕組み
●中村俊輔のパーフェクトな競技意欲
●過度の「やる気」は重荷に変わる
●「やる気」と「行動」を結びつけるのは情緒
●川口能活が示した情緒の理想曲線
【第3章】集中力はテクニックで制御できる
●3分あれば心は変わり始める
●呼吸法は集中するための先人の知恵
●腹式呼吸と逆腹式呼吸
●「内言」は思いを現実に変えるテクニック
●かすかなつぶやきと断定した言葉
●小野伸二の内言は「とってもさわやか」
●イメージは行動の未来予想図
●3ステップで磨くイメージング
●中村俊輔が描いた「最高」のイメージ
●サムライブルーは集中力を高める
●「気」は天と地のエネルギー
●一流アスリートは「気」を感じ取っている
●心と体の接点は”臍の下”にある
●ペナルティーキックの弾道が見えた!
【第4章】ここ一番で”勝つ”ための一流の集中力
●本番で結果を残してこそ一流の証明
●勝負に臨む心のあり方
●ストイックになるより”ご褒美”を
●リズム運動で不安と緊張を取り除く
●苦手意識をつくり出しているのは自分の心
●集中できないとき、どこを見るか?
●集中できないとき、なにを見るか?
●不調な状態で目指すべき最高のパフォーマンス
●集中力を持続させる”休み方”
●本番終了と同時に次への準備は始まる
●マイナスイメージを残さないように
●一流の集中力は困難の中でこそ生まれる
著者:豊田一成(とよだ・かずしげ)
1940年、滋賀県生まれ。聖泉大学人間学部教授。滋賀大学名誉教授。スポーツ心理学者。スポーツ界にはびこっていた「根性主義」を排除し、メンタルトレーニングを導入したパイオニアとして知られる。多くのプロ、アマチームを担当し、愛工大名電高校時代のイチローや、桐光学園高校時代の中村俊輔、サッカーユース日本代表のメンタルコーチとして、小野伸二、稲本潤一、高原直泰らを指導。日本オリンピック委員会の選手強化委員も務めた。また、スポーツ界にとどまらず、ビジネスマンへのコーチングも行っている。著書に『夢をかなえるイチロー力』『ビジネスマンのためのプレッシャーに強くなる豊田式メンタルトレーニング』(ともに、きこ書房)などがある。