「好きです。あなたの彼女にしてください」

すべてはそのひとことから始まった。
南里花恋。
私立双祥女子高等学校一年生。
夢は小説家になること。
そして――俺が勤める企業「アルカディア」社長の孫娘。
社長から業務命令を受けて、俺は彼女と付き合うハメになってしまった。
「好きなひとと、この公園を歩くのが夢だったんです」

JKとのデート。
もし会社の同僚に見られたら、社会的に死ぬ。
そんな危険をはらんだデートでも、彼女は無邪気に喜んでいる。
「いまどきの子」感全開のメイクとアクセサリー。
胸元や肩、脇を大胆に露出させるワンピース。
いけないと思いつつ、思春期の肢体に視線が吸い寄せられてしまう。
こうやって、大人は淫行に手を染めていくんだな……。
「先輩、ネクタイ曲がってますよ」

「いいよ別に。曲げといてくれ」
「そういうわけにはいきません。六本木で先輩の顔を売るチャンスなんですから」
綺麗な顔をすぐそばまで近づけて、慣れない手つきで一生懸命締め直してくれる。
彼女を家に連れてきたところ、我が妹・雛菜は激怒した。

「このーー!! でてけでてけ! エロJK! あたしと兄ちゃんの家からでてけぇ!」
どうも、彼女が俺をたぶらかしたと思い込んでいるらしい。
まあ間違いではないんだが――。
中学二年生の妹からすれば、実の兄貴が、自分とほとんど年の違わないJKと付き合ってるなんて、複雑なのだろう。
「ごめんなさい雛ちゃん! お兄さんを取ってしまって!」
「まだ取られてなーーい!」
残業の疲れを癒やすため、行きつけの居酒屋を訪れた。

「なぁんだ槍羽クンか」
「なんだはないだろ。いちおう客だぞ」
べー、と舌を出すこの生意気女の名は岬沙樹。
俺とは小・中・高と十二年間同じ学校に通った、いわゆる幼なじみだ。
そして――高校時代に付き合っていた、元彼女でもある。
女子高生と付き合い始めたことは、まだ、話していない。
「業務命令」で結ばれた、俺と彼女の関係。

この奇妙な関係に名前をつけるとしたら、なんだろうか。
彼氏と彼女、ではない。
友人でもない。
知人と呼ぶには深入りしすぎた。
ならば。
ありのまま、飾らずに、そのまま呼ぶほかないだろう。
29とJK。
槍羽鋭二(やりば・えいじ)

1987年生まれの29歳会社員。
仕事はできるが情にはもろい。上司には楯突くが部下には優しい。
かつて作家を目指していたため、夢に対する思いは人一倍熱い。
恋にはめんどくさがりで、積極的に拒否るかスルーする。フラグ絶対折るマン。
南里花恋(みなみさと・かれん)

2001年生まれの高校一年生。15歳。
可憐で清楚だが、仕草や発言がいちいち無防備。巨乳。
作家になるのが夢。好きな小説や漫画の話になるとイキイキと語り出す。
大人に叱られた経験がない。槍羽に叱られて、彼のことを好きになる。これが初恋。
渡良瀬綾(わたらせ・あや)

名門女子大卒。入社1年目の22歳新人。
出世を期待されるエリート社員。隠れ巨乳。
真面目すぎて冷たい印象を受けるため、社内では「冷凍美人」と煙たがられている。
上司であり先輩である槍羽に、尊敬と恋心を抱く。
槍羽雛菜(やりば・ひなな)

中学二年生。14歳。
いつも毛布かタオルケットにくるまっている超インドア派。発育途上。
兄に輪をかけてオタク。課金兵士。ソシャゲのガチャを回すべく林檎カードを兄にねだる。
外では優等生だが、家では怠けまくり。
岬沙樹(みさき・さき)

槍羽と同い年で、幼なじみ。すごく巨乳。
高校時代は槍羽と付き合っていたが、大学進学と同時に自然消滅。
元編集者だが脱サラして居酒屋の看板娘となる。同時に槍羽家の近くに引っ越してきた。
彼のことは、今でも……?