観察力の鍛え方
一流のクリエイターは世界をどう見ているのか
メガヒットをうむために、鍛えるべきたったひとつの能力。
それは、「見る力」。
データや論理的思考だけではクリエイティビティは上がらない。
だが、センスや直感・感性はどうやって磨けばいいか、わからない。
そこで注目すべき力が、観察力だ。
多くの人の感情を動かす作品も、大衆に愛される商品も、
すべては「観察する力」から生まれているーー。
「宇宙兄弟」「ドラゴン桜」「マチネの終わりに」を仕掛け、
新人マンガ家の育成に携わる著者が、その頭の中をすべてさらけ出した
ビジネス・クリエイティブで最重要となる画期的思考。
(本書「はじめに」より引用)
僕はクリエイターを発掘し、育成する仕事をしていて、「いいクリエイターの条件は何ですか?」という質問をよく受ける。そのたびに「観察力だ」と答えている。人生は長い。インプットの質が良ければ、最終的にアウトプットの質も良くなる。インプットの質を高めるのが「観察力」だ。観察力が大事だと自分で認識もしている。周囲にも観察力を高めるようにアドバイスをしている。
では、観察力とは何か、自問自答する。
それに対して、僕ははっきりと答えることができなかった。「じっくり観て、気づきを得て、考えること」というくらいの解像度の低い答えしか思いつかない。ましてや、どうやって観察力を鍛えるのか。そのためにできることは何か。僕は思いつかない。
自分たちが変わるために一番必要な概念を、自分はぼんやりとしか理解していない
のか。そのことに驚きつつ、観察とは何かを考え始めた。
そもそも観察とは、仏教用語である。科学とは、観察の歴史でもある。哲学者たち
も観察について問い続けた。この本は、そういう観察についての積み重ねをしっかりと押さえてはいない。僕が、クリエイターたちとより良い創作をするために、必要な観察とは何かを徒然なるままに思索したものをまとめたものだ。体系立てているわけではないので、学術的に観察を知りたい人には物足りなく感じるかもしれない。だが、僕と同じように観察力を鍛えたい人には、ヒントとなるものはあると思う。
■目次
第1章 観察力とは何か? 観察をめぐる旅への誘い
・「観察力」こそがドミノの一枚目
・観察を阻むものから考える
・自分という牢獄
第2章「仮説」を起点に観察サイクルを回せ
5つの具体的アクション
・「問い→ 仮説→ 観察」のサイクルを回す
1 まずは愚直なディスクリプション
2 外部の「評価」を参照軸にする
3 記憶は信用せず、データに当たる
4 徹底的に真似る 型に気づく
5 自分だけのモノサシを育む
第3章 観察は、いかに歪むか (認知バイアス)
・人は自分がみたいものだけみている
・信念を補完し、思い込みを利用する──確証バイアス
・悲観を準備する力に変える──ネガティビティバイアス
・みんなの意見に流されていないか──同調バイアス
・レッテルを貼らず〝今〟の相手を見る──ハロー効果
・成功者の話を真に受けすぎない──生存者バイアス
・問題の原因を人の能力に求めない──根本的な帰属の誤り
・現代の魔女狩りとは何か──後知恵バイアス・正常性バイアス
・現実を見る準備はできているか
第4章 見えないものまで観察する (感情類型と関係性)
・人・社会・時代を見通すために
・感情とは取り扱いの難しいセンサー
・感情を「情動」と「混合感情」に分ける
・個性は存在しない。他者との「関係性」に目を向けよ
第5章 あいまいのすすめ (正解を手放し 判断を保留する)
・観察とは本能に抗う行為
・絶対の反対とは何か
・多様性とはあいまいな世界
・「すること」と「いること」
・あいまいの4象限
・観察とは愛である