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棄民世代

藤田孝典:著者

政府に見捨てられた氷河期世代が日本を滅ぼす

『下級老人』が流行語大賞の候補としてノミネートされたのが2015年。
下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義され、高齢者の貧困問題に警鐘を鳴らした。
しかし、当時の高齢者が抱える問題より、はるかに深刻なのが、中高年化した氷河期世代が老後を迎えるときである。
氷河期世代は雇用政策において翻弄されただけでなく、自己責任という言葉のもとに、あらゆる社会政策から放置されて今に至る。
まさに政府に犠牲にされた『棄民世代』といってもよい。
彼らが高齢者でなったときには、下級老人の比ではない貧困問題を抱えた棄民老人が誕生する。
それは当事者である彼らだけの問題だけでなく、日本全体を揺るがす衝撃の未来が待ち受ける。
誰にとっても他人事ではないこの事態にいかに対処するか。
社会福祉の現場から来るべき危機に警鐘を鳴らす。

序章「棄民世代」とは何か
「いのちの電話」統計資料から見えてくるもの

第1章 データから見えてくる就職氷河期世代の過去と現在
そもそも氷河期世代とは
「氷河期=非正規」では必ずしもない
氷河期世代は「後から正社員」タイプが多い
ニート、ひきこもりは増えている
世帯形成できなかった世代

第2章 棄民世代はこれからどうなる
棄民世代は老後の収入(年金)が期待できない
氷河期世代に多い低年金、無年金者
消費税は19%に?
右肩上がりする国保の保険料と介護保険料
40代の4人に一人が貯蓄ゼロ?
ギグ・エコノミー化により加速する不安定雇用
ギグ・エコノミー化は止められない
長生きしてしまうリスク
親の介護問題
「親子共倒れ」の危機も
最後の頼みの綱は生活保護だが…

第3章 「就職氷河期世代支援プログラム」を批判する
遅まきながら与党の政治課題に
「切れ目のない支援」とは?
「より丁寧な寄り添い支援」とは?
企業は非正規を正規に転用するか
助成金モデルの限界
マッチングミスが起きる不安
必要なのは「教育給付」
失業者への手当が弱すぎる日本
なぜ「棄民世代」なのか

第4章 棄民世代を生み出したのは誰か
「いまさら感」拭えない就労支援
「第3次ベビーブーム」が起きていれば…
派遣法の「生みの親」中曽根康弘
財界に言われるがままに規制緩和を
小泉・竹中の責任

第5章 棄民世代が日本を滅ぼす?
「2025年問題」と「2050年問題」
棄民世代の犯罪が増えている?
「無敵の人」
「無敵の人」を生むのは誰か
「重要な仕事」ほど軽んじられている
最後の「タガ」を外させない
再分配の役割とは
「渋谷スクランブル交差点に突入する」と予告した棄民世代

第6章 提言・彼らを本当の棄民にさせないために
「支出を下げる」ための扶助
支出を減らすためのシェリングエコノミー
日本にはコモンがない
希望としての協同労働組合
温故知新

定価:946円(本体860円+10%税)

書籍情報

  • 発売日:2020年4月7日(火)
  • ISBN:978-4-8156-0410-3
  • サイズ:新書
  • ページ数:224
  • 付録:-

「当時の実感でいうと、世の中不景気だし実際に僕も正社員としての就職先はなかったけど、非正規でも案外いい仕事ってあるもんだな、と。だからこういう仕事が、この後もずっとあればいいなと思っていました」

2007年になると、新卒の時点でアルバイトや派遣など非正規として就労する人が男女ともに増えている。だがバブル崩壊後の波を男性と女性のどちらがよりまともに受けたかと言えばそれは間違いなく女性、それもかなり圧倒的であった。

棄民世代が正社員の職を得られないのも、結婚できないのも、全ては彼ら自身の努力不足ないしは、資質の欠如が招いたことであり、責任を社会に帰するのは単なる「甘え」だとする自己責任論が、日本社会の中では常に支配的であり続けた。

能な限り多くの人の生活を安定させないことには防ぎようがないです。だって彼らを特別に反省させたところでどうしようもないし、厳罰に処したところで絶対に何も防げませんから。

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著者紹介

1982年茨城県生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。ソーシャルワーカーとして活動する一方で、生活保護や生活困窮者支援のあり方に関し提言を行う。著書に『下流老人』(朝日新書)、『貧困クライシス』(毎日新聞出版)、『貧困世代』(講談社現代新書)などがある。

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