雇用危機をどう乗り越えるか
異色の元キャリア官僚(厚生労働省)が、雇用不安の根源的問題と解決策を筆頭両断!
2008年9月末の「リーマン・ショック」に端を発し、雇用情勢は暗澹たる状況となっている。
厚生労働省の元キャリア官僚である著者が、5年先のさらなる雇用情勢の悪化を予測、その状況下で個人ならびに国はどう対処すべきかを明快に説く。
日本は人口が減っていくにもかかわらず、失業率は上昇する。
若者を中心に非正社員にさえなれない失業者が増え、正社員は非正社員が減る中で仕事量が増え、残業に追われる。
その結果、日本企業の生産性は低下し、日本経済もシュリンクする。
一般論でいえば、人口が減ると労働力は貴重価値が高まるので失業率は下がるはずなのに、失業率が上昇するという予測は尋常ではない。
そんな5年後の「人口減少&高失業率社会」で、われわれは具体的にどのような状況に生きることになるのか。
その近未来を示す。
・職を失う非正社員数は今年3月まで40万人
・20~24歳の非正規雇用比率は43%
・内定取り消し者 769人 (昨年11月集計時点の331人から倍増)
・非正規社員の比率 37.8% (2002年29.4%)
・日本とヨーロッパ諸国の非正規雇
非正社員は今、“派遣切り”という言葉に象徴されるように雇用の調整弁として、まるでモノのように扱われている。
そんな非正社員は、戦略的にキャリアアップや実務経験を積めないまま年を重ねる。
正社員は非正社員に比べれば雇用の保障はあるものの、今以上に長時間労働に追われる可能性が高い。
また、「非正社員になると将来がない」という強迫観念が一般化し、多くが正社員を目指すようになる.
そのため、労働条件が悪くても正社員として雇用してもらえる企業に入社する傾向が高まる。
どの方向に進んでも、戦力となる人材としては質が劣化してしまう。
こうした悲観論が前提となってしまう日本の近未来だが、本書ではこうした社会で生き抜くためのメソッドと、国がとるべき政策を提言する。
キーワードはデンマークモデル(別名:フレシキュリティモデル)。
正社員と非正社員の待遇格差を縮めるとともに、両者が同じレベルでリストラされやすい、
(企業側からみれば、「辞めさせたい」と思ったときにリストラできる)ので、企業はよりリラックスして採用できる仕組み。
一方で、雇用保険や職業訓練の充実を図り、セーフティネットを充実させる。
安心して失業し、次の就職先を探せる環境を整える仕組みである。
■目次
第一章 人口減少・高失業社会という矛盾
第二章 非正規雇用問題に訪れる二つのシナリオ
第三章 本格化する正社員サバイバル
第四章 非正社員が這い上がれないシステム
第五章 ワークシェアリングの幻想
第六章 デンマークモデルが日本を救う!
■著者紹介
中野雅至(なかの・まさし)
1964年奈良県生まれ。88年同志社大学文学部卒。89年大和郡山市役所入所、在職中に国家1種行政職試験合格。90年旧労働省入省、ミシガン大学公共 政策大学院に留学、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生労働省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)を経て、公募により兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授に就任。著書に『公務員クビ!論』(朝日新書)、『間違いだらけの公務員制度改革』(日本経済新聞出版社)、『高学歴ノーリターン』『はめられた公務員』(ともに光文社ペーパーバックス)、『格差社会の結末』『格差社会の世渡り』(ともにソフトバンク クリエイティブ)など多数。