
晴れた空にくじら 浮船乗りと少女
そういってやってきたのは、くじらうちの少女だった。
「ここに浮船があるでしょう――そのフネ、私にください」
突然現れた少女の、あまりに突拍子もない申し出に、雪平はしばらく返事ができなかった。
浮船――空を飛ぶ不思議な生物「浮鯨」から採れる器官「浮珠」を利用した空中船が、たしかにこの事務所には一隻ある。だが、もちろんそれは気軽に人にあげたりもらったりできるものではないのだ。驚きつつも、とりあえず少女に詳しい事情を訊こうとする雪平。しかしそれは彼らにとっての大きな冒険の始まりに過ぎなかった。
戦争の始まった空、くじらの棲む成層圏の下で展開する、ボーイ・ミーツ・ガールストーリー。