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身近な雑草たちの奇跡

森 昭彦:著者

道ばた、空き地、花壇の隅……気づけばそこにいる植物の生態

【小さなムダ知識が集まれば、ご近所の道ばたも輝き出す!】

わたしたちがなにげない散歩の途中で出遭う植物の数は、もはや計りしれない領域に突入しています。植物は〝動かない〟はずの生き物ですが、ヒトとモノの流れに乗って行き来し、その姿をも刻々と変えてゆきます。有史以来、世界中の植物をこれほど気軽に堪能できる時代はかつてありません。

本書では、「雑草」と呼ばれる身近な植物を中心に、よく目を凝らせばびっくりするほど美麗な姿から、不思議な名前の由来、恐ろしく多彩なバリエーション、ディープな生態までご紹介します。ほんの少しのムダ知識で、ご近所のなんてことはない道ばたや空き地も輝いて見えてくる、楽しき植物観察ライフをどうぞ。

第1章 道ばたや空き地を彩る小さな小さな雑草たち
オオイヌ家の一族―――オオイヌノフグリ
甘美なる蠱惑な異才――ホトケノザ
地中海の幸せぽんぽん――クスダマツメクサ
草むらの寝業師――ムラサキサギゴケ
ほつれて溶けて、愛らしく――ウリクサ
ああ、我が懐かしき割烹着――アゼナ
涙の真珠――テンツキ
……ほか

第2章 しなやかに、したたかに進化する雑草たちの神秘
化学者は穴掘りがお好き――カタバミたち
ナゾだらけの規格外生命――タンポポたち
知らなきゃよかったこの一件――ナズナたち
“負けて百両”のしなやかさ――スズメノカタビラ
坊主を求めて幾星霜――ハルジオン、ヒメジョオンたち
……ほか

第3章 一度気づけば存在感大! なんとも悩ましき顔ぶれ
遊びの効能と毒の効能――ドクゼリ
ひょっとしてハッとして――ドクニンジン
製薬原料の大暴走――シャクチリソバ
最後の饗宴――セイタカアワダチソウたち
風を染める黄色いネバネバ――ブタクサたち
……ほか

第4章 あなたの身近にもいる? 寄生で奇妙で無精な面々
隠密は、よく眠る――ヤセウツボ
強害草で絶滅危惧種で――ナンバンギセル
ナゾのリサイクル協定――ギンリョウソウ
大好物は「マツタケですの」――シャクジョウソウ
森を“自分の葉っぱ”にする才智――イチヤクソウ
……ほか

定価:1,760円(本体1,600円+10%税)

書籍情報

  • 発売日:2021年3月20日(土)
  • ISBN:978-4-8156-0616-9
  • サイズ:46判
  • ページ数:296
  • 付録:-
  • オオイヌノフグリ

    “Forget-me-not”(わたしを忘れないで)といえば、いまではワスレナグサを指すが、欧米では一時期ではあるにせよ、オオイヌノフグリの仲間の多くをそう呼んだ。その由来がちょっとおもしろい。

  • イボクサ

    稲穂が垂れるころ、田んぼへ行くと、イネの株元あたりでわしゃわしゃと茂り、小花をたんと咲かせている。花びらの白地に赤紫のグラデーションが溶けているのも愛らしいが、この花、雄しべの存在感が秀逸なのだ。

  • ウリクサ

    その色彩は、バニラアイスの上にグレープソースを垂らしたような甘さで、ソースがそれは絶妙な具合でもってバニラに滲(にじ)み、ゆるやかにほつれては溶けてゆく……。その移ろいたるや絶佳。

  • カタバミの仲間

    地面がない歩道橋、ビルの屋上であっても、カタバミたちはちゃっかりと棲みつき、愛らしく微笑むような花を咲かせる。ひとまず連中が継承してきた秘儀のひとつが“穴掘り”であることだけは調べがついている。

  • スズメノカタビラ

    世間様からより強く、幾度となく踏みにじられることで、以前よりずっと大きく茂る。外から物理的な刺激を受けると、特殊な分泌物が増加し、細胞の保護と速やかな増殖をうながすという「ちょっとありえないシステム」なのだ。

  • ハルジオン、ヒメジョオンの仲間

    そっくりな別種がたくさん渡来している。むしろ見分けられる人のほうがどうかしているなか、分かりやすく、おもしろい顔がいる。ボウズハルジョオンという。坊主とあるが、まるっきり坊主でないところがたまらない。

  • シャクチリソバ

    化学工場のように、ルチンをはじめとする有機化学物質をこさえては、まわりに散布する。そのせいか、なみいる強豪植物のそばでも、怯むことなく楽園を築く。その生命力の素晴らしさと美しさを、身近な河川敷で堪能できる。

  • アメリカネナシカズラ

    全国の道ばた、雑木林、河川敷のほか畑地にも侵入する。大きな群落は、そこらじゅうにラーメンをぶちまけたような奇景となり、絡まれた植物たちの苦悶の声が、いまにも耳に届きそう。それはキツく、ぐるぐる巻きにされる。

  • ギンリョウソウ

    銀竜草と書く。茎にある白いウロコのような装飾は葉である。必要な栄養素を自らこさえることができず、ベニタケ属というキノコの菌糸から、必要な栄養の多くを吸収。この両者、思いのほか上手くやっているようなのである。

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著者紹介

著者・森 昭彦

1969年生まれ。サイエンス・ジャーナリスト、ガーデナー、自然写真家。おもに関東圏を活動拠点に、植物と動物のユニークな相関性について実地調査・研究・執筆を手がける。著書に、『身近な雑草のふしぎ』『身近な野の花のふしぎ』『うまい雑草、ヤバイ野草』『イモムシのふしぎ』『身近にある毒植物たち』『身近な野菜の奇妙な話』(いずれもSBクリエイティブ)、『帰化&外来植物 見分け方マニュアル950種』(秀和システム)などがある。

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