
リストカットシンデレラ(上)
人気ホームページ作成サイト「ポケスペ」の「第1回ポケスペ小説大賞」審査員(樋口卓治)賞受賞作品(大賞作品は1月刊行「ドロップ」)。親の離婚や同性愛者であることの葛藤などから、リストカットに走ってしまう少女の心の内を描いた自伝的作品。
【内容】
両親と6歳年下の妹との家族4人で、幸せに過ごしていけると思っていた女の子、カイ。しかし、母親は男を作って出て行き、やがて父親は再婚する。もともと人付き合いが苦手なカイは、新しい母親のもとではなく、祖父母の家で暮らし始める。思春期を迎えた彼女は、気になる相手が常に女の子であることに気づき、それがおかしいことだと知る。家族との付き合い、同性愛者である引け目など、社会にうまく適応できないという思いが、やがて彼女を自傷行為=リストカットへと走らせるのだった。
現状にもがき苦しみ、何とか解決への道筋を探していこうと行動するカイの姿に、生きることの苦しみと喜びを感じずにはいられない。
【参考】
樋口卓治
放送作家。代表作はさんまのSUPERからくりTVの「からくりビデオレター」、学校へ行こう!MAX、ガチンコ!、ココリコミラクルタイプ、リンカーン 、笑っていいとも!(金曜日)など。
【選出コメント】
放送作家としてバラエティ番組を生業とする自分が何故、この「リストカットシンデレラ」に惹かれたのか? それは読み進むに連れて伝わってくるリアリティである。笑いも感動もフィクションだろうがノンフィクションだろうがどんな物語の背骨はリアルが大切。いつも職業柄、作品に触れる時、リアルのあら探しをしてしまうんですが、僕はこの作品にとことんリアルを感じました。ヒリヒリとする思春期を飾らず「私」の視点で語ってくれる。冒頭にある「知らないって幸せだよね~」と言うさりげない本音。でも「私」は知りたくもない現実をどんどん体験していく。飾らずに嘆き、怒り、飾らずに受け止めるストーリーに感動しました。そして、かつて立川談志が言った「落語は業の肯定である」と言う言葉をこの作品で再び思い出しました。(講評:樋口卓治 氏)
小学生の煙草と自殺未遂/男の子と女の子/6年生たち/父の知らない母/万引き/コンビニ/未遂×未遂/役立たず/オオカミ少女/天国と地獄/偽優等生/初恋/一家心中/マザコン/血まみれのボタン/再婚/優/無視/恋人/幸せな日々/高校/悲しい約束/抜かれたコンセント/夢と現実/睡眠薬/友達/絶頂感/じいちゃん/浮世/本当の友達/涙雨/お母さん/カミングアウト
<読者レビューより>
●私も親居るのに、ぉばぁちゃんと住んでいます。共感できるところがいっぱいありました。これからも頑張って下さい。●続きが気になって、夜中までかかってよんでしまいました。私は今13歳で母も本当の母だけど、すごく共感できる部分があるし、おばあちゃんの喋り方が似ててなんだか久しぶりにすごく泣いてしまいました。●無我夢中で1日で読み終わりました。久々に集中して文字を読みました。どこか似ていて…共感できる部分もあって…感動しました。今が気になります。●人に元気や勇気や希望を与えるのは簡単なことではないけれど、この作品にはそういうものを人の心に届けられる力がある。●こんなにも泣いて、自分自身に問いかけた6日間は私にとってもう二度と無いんじゃないかと思えました。私もバイで、それ以外にも家族と沢山ぶつかったし、今も家族関係の問題があります。春からの一人暮らしをする前にこの作品、そしてカリさんに出会えて良かった。生きるのも前に進むのも私は本当は怖い。でもそんな怖さも吹き飛ばせるくらいの何かを私はこの作品で得ることが出来たと思います。●生きるって深くて痛くて…。そんな中でも大切な友情や愛や家族があって。それは時に足枷となることもあるけど。やっぱり生きるって奇跡みたいなことなんだ…ってこの小説を読んで思いました。●とりあえず泣きました。アタシもバイというかビアン寄りで、リスカも昔してました。お父さんからの電話の言葉が自分にも痛いように突き刺さってなんだかいたたまれなくなりました…自分も諦めかけてた夢を叶えてみようと思います!!!