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[Si新書]潜水艦の戦う技術

山内 敏秀:著者

現代の「海の忍者」――その実際に迫る

国土を海に囲まれている日本は、輸出入の99.7%を船に頼っており、海上交通路(シーレーン)を確保できるか否かは、国家の存亡にかかわります。海上交通路の確保に重要な役割を果たすのが、海中を長期間行動できて隠密性が高い潜水艦です。日本に限らず海洋国家の多くが潜水艦を運用しています。また、核保有国の多くは、核弾頭を搭載したミサイルを積んだ原子力潜水艦を抑止力として運用しています。本書では、あまり知られていない潜水艦の秘密を解説していきます。

■目次:
第1章 潜水艦の歴史
第2章 潜水艦の構造
第3章 潜水艦の潜航と浮上
第4章 潜水艦の動力
第5章 潜水艦の航法
第6章 潜水艦と音
第7章 潜水艦の戦闘
第8章 潜水艦救難
Column 潜水艦乗りへの道

定価:1,210円(本体1,100円+10%税)

書籍情報

  • 発売日:2015年6月16日(火)
  • ISBN:978-4-7973-8129-0
  • サイズ:新書/フルカラー
  • ページ数:224
  • 付録:-
潜水艦の構造

海上自衛隊の「うんりゅう」。セイルの側面に取り付けられているのが、深度をコントロールするための潜舵です。潜水艦の船体が他の船の船体と異なるのは、水中を行動することに由来します。水圧に対抗して乗組員と装備機器の空間を確保している船体を耐圧船殻と言います。耐圧船殻の能力は、潜水艦がどのくらい深く潜れるかを決定します。このため、耐圧船殻の材料として超高張力鋼が使用されることが多いのです。

メイン・バラスト・タンク(MBT)

MBTは内殻と外殻によって形成されたタンクのことで、浮上中は予備浮力を提供し、潜水艦の浮上状態を維持します。タンクの頂部には空気を抜くためのベント弁があり、タンクの下部には後で述べる一部のタンクを除いては、フラッド・ポートと呼ばれる穴が開いたままになっています。

潜水艦の舵

船が運動するために、水中の艦尾付近に舵が装備されています。右に曲がるときには、艦橋あるいは船橋にある舵輪を右に回すと舵が右に動き、その結果、船は右に曲がります。右に曲がるために舵を右に取ることを日本では伝統的に「面舵」と呼んでいます。反対に左に曲がるときは「取り舵」になります。潜水艦では舵は3つあります。日本ではすべてに舵という言葉をあて、縦舵、潜舵そして横舵となります。

潜望鏡

日本の潜水艦は、世界最高水準にある光学技術に支えられ、世界最高の潜望鏡を装備しています。レーダーが装備され、さらに敵のレーダー波を探知して警報する早期警戒用ESM(敵のレーダー波を探知する装置で、いわゆる逆探)、さらに真っ暗闇の中でも目標を視認できるように暗視装置が、また潜望鏡は1人の人間しか目標を見ていませんが、その情報を多くの人間が共有できるようにビデオ装置が組み込まれるようになりました。

潜航

潜航・浮上の原理を理解する最も簡単な方法は、お風呂で洗面器を逆さまにしてお湯に沈めてみることです。洗面器の中に少し水が入ってきますが、それ以上は入ってきません。この状態が浮上中の潜水艦のメイン・バラスト・タンク(MBT)の状態です。洗面器の底に穴を開けると、中に水が入ってきてすぐにいっぱいになります。これが潜航です。潜水艦は、浮上状態でベント弁を開くとフラッド・ポートから海水が入ってきて浮力を失い、潜入する。

スターリング・エンジン

2ピストン・スターリング・エンジンは、その名のとおり2つのピストンによって、作動気体を移動させるとともに動力を取り出しています。「そうりゅう」型潜水艦は、この2ピストン・スターリング・エンジンを4基搭載しています。温めると膨張し、冷やすと収縮するという空気の性質を用いている。温度が異なる2つの空間と、90度の位相差を付けた2個のピストンを利用する。

潜水艦の通信

命令は通常、文書の形式で受け取ります。艦長はこの命令に基づき作戦計画を立て、出港していきます。超短波(VHF)、極短波(UHF)を使用した通信です。VHFあるいはUHFは、原則として通話による交信に使用されます。さらに、現在では必要に応じ衛星通信も使用されています。

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著者紹介

山内敏秀(やまうちとしひで)
1948年、兵庫県生まれ。1970年、防衛大学校(第14期)卒業(基礎工学1専攻)。海上自衛隊入隊。1982年、海上自衛隊幹部学校指揮幕僚課程学生。1988年、潜水艦「せとしお」艦長。1996年、青山学院大学国際政治経済学研究科修了。2000年、防衛大学校国防論教育室教授。2004年海上自衛隊退官。現在は、太平洋技術監理有限責任事業組合理事(安全保障担当)。首席アナリスト。

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