音読で外国語が話せるようになる科学
科学的に正しい音読トレーニングの理論と実践
上達のメカニズムと有効な学習法を徹底解説
外国語習得の効果的な学習法として再注目されている「音読」。語学力の向上を目指すにあたり、誰もが一度は実践したことのあるトレーニングだと思いますが、この「音読」のどこがそんなにも優れているのでしょうか?
そもそも「音読」とは、書かれた単語や文、文章などの「書き言葉」を、音声言語すなわち「話し言葉」に置き換えて発音するタスクです。実は、この音読の一連の動作の中には、外国語習得を成功に導く4つのキーポイント、つまり①インプット処理、②プラクティス、③アウトプット、④モニタリングのすべてが含まれているのです。
本書では、「音読」の有効性を科学的な視点から明らかにしていくとともに、外国語を流暢かつ正確に話せるようになるための音読トレーニングとして、どのような点に留意する必要があるかについて、そのノウハウについても詳しく解説していきます。言語習得を目指すなら、まずは本書で「本当に有効な」音読トレーニングについて学んでいきましょう。
~「はじめに」より~
外国語(英語)が話せるようになるための音読とは何か? 音読でどのようにして英語の発話力(スピーキング力)をつけるか?
これらを科学したのが本書です。
多くの読者の皆さんにとって、外国語(英語)での音読と言えば、学生時代に先生に指名されて立ち上がり、先生がストップと言うまで、教科書の文章を声に出して読んだことを思い出されるのではないでしょうか。そして、音読とは書かれた文を声に出して発音すること、つまり文字を音声に変えることであると考えておられるのではないでしょうか。
前著『外国語を話せるようになるしくみ』(SBクリエイティブ)では、外国語(英語)習得のポイントとして、IPOM、すなわち「インプット処理」「プラクティス」「アウトプット産出」「モニタリング」の4つを提唱しました。
その中で、モニタリングは、自分自身の学習方法をモニターするもうひとつの自分、「メタ認知」の能力です。自分のメタ認知力を育てるには、「音読が何を目的にした、どのような活動で、その結果どのように英語その他の外国語能力の育成に役立つか」について正確な知識が必要です。そうしないと誤った認識、誤った自己モニターに陥ってしまいます。誤った知識にもとづいた誤った自己分析は、誤った学習目的の設定や誤った学習方法の採用に至ります。
誰でもそうですが、人が使用できる時間というものは限られています。無尽蔵にあるわけではありません。特に働きながら、英語や他の外国語の習得を目指す人にとって、最適な学習法を見つけ出すことは死活問題であると言えます。
本書は、ことばの習得をめぐる、隣接諸科学、たとえば言語学、音声学、認知心理学、認知科学、脳神経科学の成果、およびここ十数年の間にめざましい進歩を遂げ、世界的に数々の研究成果が出されている第二言語習得研究の知見を集約して音読学習について提案するものです。
科学的な成果に裏づけられた音読学習は、前著で解説したシャドーイングによる学習と同様に、ほとんど「王道」と言って差し支えないでしょう。これを活用しない手はありません。
本書を通じて読者の皆さんご自身が、英語のスピーキング力を獲得され、新たな将来展望を見据えていただく、そのための一助になれば、著者としてこの上ない歓びです。
序 章 なぜ音読なのか?
──音読が英語学習上の最大の困難を克服する
第1章 書きことばをベースにした音読トレーニングとは?
──話し言葉ベースのシャドーイングとの違い
第2章 音読が外国語のインテイク(知識獲得)を向上させる
──音読のプラクティス効果
第3章 音読が伸ばすスピーキング力
──音読のアウトプット効果
第4章 音読が伸ばすメタ認知能力
──音読のモニタリング効果
第5章 バーチャルインタラクションのすすめ
──登場人物になりきる「なりきり音読」の効果
第6章 音読の効果的な学習法
──ただ読むだけでは効果なし