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勤続疲労に克つ

夏目 誠:著者

働き盛りに忍び寄る見えない恐怖

健康診断では異状なし、しかし、確実に心身の疲労を感じている--勤続10年を過ぎた人たちを蝕む”勤続疲労”は、日々会社で仕事をする私たちがさらされている脅威であり、放置すれば深刻な結果をもたらしかねません。蓄積された疲労の解消処方箋を示します。
『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)という本がヒットしたように、現在、新入社員の会社への定着率が悪化の一途をたどっているという。せっかく入った会社をいとも簡単に辞めてしまうのは、もちろん会社側にも何がしかの問題があるのかもしれないが、一方で、若者の側に、組織への帰属意識の希薄さや、規則による束縛、上意下達的な社会に対して耐性ができていないことにも原因があるだろう。まだ若く、養うべき家族を持たない彼らは、背負うものがない分、ストレスがたまる状況になれば、比較的簡単に会社を「辞める」あるいは「転職する」といった選択肢を選ぶ。
しかし、勤続10年を超え、会社でも中堅どころとなった30代、40代のサラリーマン/ウーマンともなると、その多くは家庭を構え、後輩や部下を持ち、そう簡単に「やーめた!」というわけにはいかない。また、そうした外的要因のほかに、自身の心理的な傾向としても、若者と比較して、「休職」「退職」「転職」といったことにどこか後ろめたさを感じる精神的バリアの高さも、一因と言える。
そういうわけで、格差社会におけるニート化、フリーター・非正規雇用の増加などの問題が指摘される若年層、また逆に、少子高齢化、年金問題などの問題が顕在化する中高年層を取り巻く状況がマスコミで多く取り上げられる中、ともすると30?40代のいわゆる「働き盛り」と言われる世代は、比較的問題の少ない世代として、現状、クローズアップされる機会も多くない。
しかし、産業精神科医という立場から数多くの症例を見てきた著書の目から見ると、実は、爆発したら怖い、もっとも深刻な問題を抱えているのは、 “真面目が裏目”となって、仕事の重圧やしがらみ、過重労働から来るストレスを背負い込み、決壊寸前となりながら、持ち前の責任感からそれを放り出すことが出来ないでいる働き盛りの勤続10年(以上)選手たちだという。
そこで本書では、長年の勤務によって蓄積され続けた疲労が、さまざまな心身の不調をきたすこうした実態を”勤続疲労”と定義し、その深刻さは実態を伝えるとともに、予防策や、もしそのような状態になってしまった際の対策、また、企業側の責任などについて詳しく解説している。少しでも心当たりがある人は、読んで欲しい--あなた自身の心と体を守るために。

序 章 「勤続疲労」を知っていますか?
1働き盛りを蝕む「勤続疲労」
2 勤続疲労とは何か?
3 慢性型と急性型、2つの勤続疲労
4 いま、なぜ勤続疲労なのか?
5 勤続疲労増加の背景と対応
第1章 勤続疲労ケースのドキュメント
1 事例I――勤続10年、35歳男性・佐藤さんのケース
2 事例から学ぶ問題点と対応
第2章 勤続疲労とは何か
1 事例II――43歳男性、企画部次長・高田さんのケース
2 疲労度の測り方
3 勤続疲労の2つのタイプ
4 疲労の医学的メカニズム
5 心の疲労と病気
第3章 過重労働とストレス
1 事例III――35歳男性、経理課長・山田さんのケース
2 ストレス(STRESS)をその頭文字から理解する
3 過剰ストレスと心身の不調のメカニズム
4 ストレスに気づく
5 長時間労働とストレスの関係
第4章 企業における対応の実際
1 対応企業の増加とその背景
2 職場環境の改善
3 事例IV――35歳男性、総務部係長・加藤さんのケース
第5章 個人への対応
1 事例V――32歳女性、顧客サービス課主任・大林さんのケース
2 事例VI――48歳男性、営業部部長・松島さんのケース
3 個人対応の実際
4 過剰ストレスへの個人対応
第6章 勤続疲労になったらどうする?
1 事例VII――35歳女性、営業職・大山さんのケース
2 サインに気づく
3 個人での対応の実際
4 企業に求められるメンタルヘルス活動の普及

定価:803円(本体730円+10%税)

書籍情報

  • 発売日:2008年3月17日(月)
  • ISBN:978-4-7973-4326-7
  • サイズ:新書
  • ページ数:280
  • 付録:-

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