
本書はなにも苦労することなく、楽しみながら有機化学の最先端の知識までを身につけようという、スゴク欲ばった本です。有機化学の論文をご覧になったら、絵の多いことに驚くでしょう。この絵が有機化学の言語なのです。この絵は化学式といわれるものですが、高校の化学で習ったような、元素記号ムキダシのヤバンで無骨なものではありません。マンガによる表現力はもしかしたら化学式以上のものかもしれません。本書がそのような現状を打ち破るための、1 つの起爆剤になるかもしれないと、私はヒソカナ“野望”をもっています。みなさんが本書で有機化学のおもしろさを実感され、「もう1冊有機化学の本を読もうか?」と思ってくださったら、私のいちばんうれしく思うところです。
同じ原子の結合

もっとも簡単な分子は水素分子H2 です。2個の水素原子が1本ずつの結合手で結合しています。このような結合を単結合といいます。酸素分子O2では、酸素原子が2本ずつの結合手で二重に共有結合しているので、この結合を二重結合といいます。同様に、3本の結合手をもつ窒素がつくる窒素分子N2 は三重結合をもちます。
エチレンは平面形の分子

エチレンC2H4は、C= C二重結合を含む分子のなかで、もっとも小さなものです。その意味でメタンと同じように有機物の基本となる化合物です。2個の炭素は、それぞれ4本の結合手のうち2 本ずつを使って結合します。このような結合を二重結合といいます。各炭素は残った2本ずつの結合手で4個の水素と結合します。この結果、エチレンは6 個の原子すべてが同一平面上に並んだ平面型の分子になります。
共役化合物ってなんのこと?

単結合と二重結合が1 個おきに並んだ結合を、全体として共役二重結合といいます 。また、共役二重結合をもつ化合物を、一般に共役化合物といいます。共役二重結合では、二重結合は単結合の性質を帯び、反対に単結合は二重結合の性質を帯びています。すなわち、単結合と二重結合の区別がはっきりしなくなっているのです。そのため共役化合物は、特殊な性質と反応性をもつことになります。
エーテルの種類と性質

2 つのアルキル基が酸素と結合したものを、エーテルといいます。2 つのアルキル基がともにメチル基のものをジメチルエーテル、エチル基のものをジエチルエーテルといいます。たんにエーテルというと、ジエチルエーテルを指すことがあります。ジエチルエーテルは有機物を溶かしやすいので、有機反応の溶媒として用いられます。
アミンの種類と性質

アミノ基NH2 をもつ化合物をアミンといい、窒素についたアルキル基の個数によって、4種類のアミンに分類します。窒素に1つ、2つ、3つのアルキル基がついたものを、それぞれ第一級、第二級、第三級アミンといいます。上のアミンにH+ が付加した陽イオンはそれぞれ、第一級、第二級、第三級アンモニウム塩と呼ばれます。
水だって付加しますよ

水は、物質を溶かして反応溶媒になるだけではありません。試薬として、積極的に反応に関与することもあります。そのような例が付加反応です。水がアルケンに付加するとアルコールとなります。エチレンに水が付加するとエタノールになります。これは、エタノールの工業的な合成反応になっています。