
本書は二段構えになっています。第一段は汚れ落としの技術解説です。衣服の汚れはどのようにして落としたらよいのか? 家屋の汚れはどのようにしたらよいのか? という、いわば汚れ落としのハウツーです。そして第二段は汚れ落としの科学的な解析です。中性洗剤はどのようにして汚れを落とすのか? 重曹が汚れ落としに役立つのはなぜなのか? 水垢落としにクエン酸が良いのはなぜなのか、という解説です。本書を読んでいただけたら、汚れ落としという何気ない働きのなかにいかに多くの科学と化学が詰まっているか、そして研究開発するためにいかに多くの先人が知恵を絞ってくれたかをご紹介します。
血液、卵、タンパク質の汚れはジアスターゼで分解

血液の汚れは新しいうちは落ちますが、古くなると頑固で落ちにくくなります。簡単で意外と有効なのが大根おろしです。大根にはタンパク質分解酵素のジアスターゼが含まれているのでこれを利用するのです。大根おろしを布にくるむとか、絞り汁を布に含ませるとかして汚れの部分に当てがいます。しばらくすると血液の色が落ちます。後は洗濯機などを用いて普通の洗濯です。
漂白剤と蛍光染料

漂白剤とトイレ用洗剤を混ぜると猛毒の塩素ガスが発生します。トイレ用洗剤には塩酸HClが入っていることを前提として、この両者を混ぜると、次の反応式に従って極めて素直に塩素ガスCl2 が発生します。(上図)エスクリンで染色すると、汚れの黄色がかった色がエスクリンの発する青白い光でマスクされ、輝くような白に変色しました。(下図)
軽度の油汚れには重曹+食器用洗剤+熱湯

換気扇やグリル、魚焼き器についた油汚れはべたべたして気持ちの悪いものです。軽度の油汚れには重曹+食器用洗剤+熱湯軽度の油汚れには重曹を使います。食器用洗剤と等量から2倍量ほどの重曹を熱湯に溶かし、そこに分解した換気扇を浸けて数時間置くと油の層が浮いて、そこをブラシやスポンジを用いて洗い流します。
シャワーの目詰まりにはクエン酸

目詰まりを解消するには、これら金属化合物の固形物を溶かさなければなりません。シャワーの目詰まりは、クエン酸水にシャワーヘッドを一晩浸けておき、翌日ブラシを用いて掃除します。シャワーヘッドの目に詰まっていた硬い塊は軟らかくなっているので、ブラシで簡単に落ちるでしょう。
スマートフォンの汚れ

スマートフォンの液晶ディスプレイには専用のクリーニングクロスで汚れを絡め取るようにします。ローラーのガムテープの上を転がしてホコリを転写したほうが簡単に復活します。もし粘着力が回復しなくなったら、メラミンスポンジで水をつけてこすり、キムワイプなどの毛羽立ちしないもので拭き取るとかなり粘着力が回復します。
化粧用スポンジ、ブラシの汚れ

化粧用品は意外と汚れていることがあります。基本的な洗い方ですが、ぬるま湯に1%ほどの濃度で中性洗剤を溶かします。この溶液にブラシの毛の部分だけを浸けて、汚れが落ちたら、ぬるま湯で十分にゆすいで洗剤を完全に除きます。タオルで水分を完全に除いたら乾燥です。筆を横にして放置します。