あなたへ

この本では、ユーリ、テトラちゃん、ミルカさん、そして「僕」が数学トークを繰り広げます。
彼女たちの話がよくわからなくても、数式の意味がよくわからなくても、先に進んでみてください。でも、彼女たちの言葉にはよく耳を傾けてね。
そのとき、あなたも数学トークに加わることになるのですから。
ツルカメ算から連立方程式を立てる

• ツルがx 匹いるとする。
• カメがy 匹いるとする。
• ツルとカメが合わせて5 匹いることから、
x + y = 5 が成り立つ。
ユーリ「はいはい……」
僕「これで問題文のうち『ツルとカメが合わせて5 匹います』を
x + y = 5 という数式に移したことになるよね」
僕は宿題プリントを指さしながらユーリに説明する。
ユーリ「はいはい……」
僕「同じようにして今度は『ツルとカメの足の数を合わせると
16 本になります』という文を数式に移してみよう」
------略----------
x + y = 5
2x + 4y = 16
僕「僕たちはこれで、ツルカメ算の文章を数式の世界に移したこ
とになる。《連立方程式を立てた》わけだね」
方程式は必要ない?

僕「足が16 本なら、ツルが2 匹、カメが3 匹だってことだね」
ユーリ「そーだよ。こんくらい、ぐっと考えれば解けるじゃん。
わざわざ連立方程式なんて立てなくても」
僕「確かにね。この問題なら連立方程式なんか立てる必要ない」
ユーリ「でしょー?」
僕「ねえ、ユーリ。連立方程式を立てなくてもこの問題が解け
るっていうのは、その通りだよ。でも、ここでやっているの
はね、単に《ツルとカメの数を求めること》じゃないんだよ」
ユーリ「へ?」
僕「ここでは《ツルとカメの数を求めること》だけを学んでいる
んじゃなくて、それを通して《数学を使って問題を解くこと》
を学んでいるんだ」
ユーリ「どーゆー意味?」
《数学を使って問題を解く》とは

(1) 《現実の世界》から《数学の世界》に問題を移す。
(2) 《数学の世界》で問題を解き、解答を得る。
(3) 《数学の世界》から《現実の世界》に解答を移す。
ユーリ「お兄ちゃん……」
僕「この(1) が《方程式を立てる》ことだね。そして(2) が《方
程式を解く》ことになる。ツルカメ算は簡単だ。連立方程式
も難しくない。でも、大切なのはこういう流れを学ぶことなん
だよ。《現実の世界》と《数学の世界》を行ったり来たり
して……」