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植物のすさまじい生存競争

田中 修:著者

なわばり、毒、トゲ、再生、色香、寄生……

植物たちのイメージは、「きれい」「おとなしい」「癒やされる」などかもしれません。しかし、植物たちの世界に一歩踏み込むと、厳しい生存競争が、繰り広げられています。本書では、自分が生き残り、子孫を残すための力を秘めている植物の真の姿を解説します
私たちのまわりに育つ植物は静かに暮らしているように見えます。でも、植物が生きていくためには、栄養をつくるために必要な光、根を生やせる土地、吸収する水や養分が必要です。新しい植物がその場所に侵入してくれば、自分たちの暮らしが脅かされるので、自分たちの静かな暮らしを守るために、侵入してきた植物と闘わねばなりません。自分が新しい生育地を獲得するために、離れた場所に移動すれば、そこにすでに育っている植物たちと闘わなければなりませんから、発芽した芽や根には、戦う力がなければなりません。生育する場所が獲得できても、夏の暑さや冬の寒さとは毎年、闘わなければなりません。夏には紫外線や灼熱の太陽の強い光に耐えねばなりません。動物に食べ尽くされない工夫も凝らさなければなりません。人間とも共存、共生しなければなりません。人間は、必要な植物なら共存共生し、大切にしますが、必要ない植物にはひどい仕打ちで、その場から追い払おうとするからです。静かに暮らしているように見える植物たちも、すさまじい生存競争に打ち勝つための力を隠しもっているのです。植物たちは、自分が生き残り、子孫を残すために、自分の力を秘め、知恵をめぐらせ、さまざまな工夫を凝らしているのです。

■第1章 枯れ滅びないための戦い
(1)光を求める力
クズカズラ(葛蔓)とは?
クズのすごい成長力とは?
クズの成長力を支えるのは?
クズは、ゴミの生まれ変わり?
アメリカで、「侵略者」とよばれても!
背丈を伸ばす「徒長」とは?
光のくる隙間を求めて伸びる性質とは?
ツルが巻きつく性質とは?
(2)生育する場所の確保
セイタカアワダチソウの猛烈な繁茂とは?
「徒党を組む」ための「しくみ」とは?
ロゼットの利点とは?
土地を死守するための武器とは?
「ジャパニーズ・ノットウィード」とは?
忍者のように「潜る術」
「根絶できない」といわれる植物の武器とは?
寒さに耐えているだけではない!
「潜る」という戦術!
「なわばり」を守るためには、覆いつくす!
戦いを避ける極意を心得た植物は?
「光の奪いあい」の戦いの巧妙な避け方
(3)水や養分を吸収する力
はり巡る根の本数は?
タンポポの根は、どこまで深くに伸びるのか?
樹木の根は、どこまで深くに伸びるのか?
根には、「ハングリー精神」がある!
根は水を求めて伸びる!

■第2章 からだを守るための戦い
(1)紫外線との戦い
なぜ、紫外線は有害なのか?
活性酸素とは?
活性酸素の害を消す物質とは?
花の色素は、抗酸化物質
(2)暑さと寒さとの戦い
暑さ、寒さに弱い草花の戦略とは?
暑さに強い植物の戦略とは?
暑さと戦うための仕組みとは?
寒さに弱い樹木の戦略とは?
越冬芽をつくる仕組みとは?
寒さに強い樹木の戦略とは?

■第3章 食べられる宿命との戦い
(1)なるべく食べられないように
からだを守る姿は、ロゼット型!
少しくらいなら、食べられてもいい!
(2)食べ尽くされないための戦いの武器は?
「からだを守る」戦いの武器は、「トゲ」
トゲは、「からだを守る」戦いの武器になるのか?
「芽生えを守る」戦いの武器は、有毒な物質
「身体を守る」戦いの武器は、有毒な物質
有毒な物質は、「からだを守る」戦いの武器になるのか?
有毒な物質のおかげで、人間と共存、共生!
「渋み」も「辛み」も武器となる!
「酸っぱい味」も武器!
消化酵素も武器になる!
「針状結晶」でからだを守る!
(3)病原菌との戦い
香りは植物の武器になる!
虫を追い払う香りを放つ樹木
香りが、「助けて!」という合図を送る植物
桜餅の香りも、防虫効果!
殺菌効果のある香りを放つ樹木
ファイトアレキシン

■第4章 虫を誘うための戦い
(1)魅力を競う!
なぜ、虫を誘う戦いをしなければならないのか?
花の色と模様で仕掛ける?
純白の装いで、魅力をアピール!
虫を誘い込む模様
紫外線で、蜜標を見せる!
花の魅力はさまざま!
(2)花の大きさと数
「はなやかさ」を演出
小さい花なら、集める!
(3)形で誘う 手段は問わない!
擬態でだます!
騙すわけではない!
相性を求めて
色香で惑わす!
香りは、飛び道具!

■第5章 生き残るための工夫
(1)タネで増えるのか?
タネ以外で増えるものは、多くある!
球根で増えるものもある
チューリップのタネを見かけない理由は?
ヒガンバナには、タネはできない!
タネをつくらない植物は多くある!
タネなしフルーツは、タネをつくらないのか?
(2)根を土に生やし、養分を吸っているのか?
水に浮かんだホテイアオイ
根も葉もない植物!
(3)緑の葉っぱをもっているのか?
葉をトゲに変えて生きる植物
葉のように見えるウキクサの葉っぱ
(4)葉で光合成をして栄養をつくっているのか?
光合成をしない植物!
寄生する植物とは?
(5)きれいな花を咲かせるのか?
「花びらのない花」を咲かせる植物たち
花びらのない花は、めずらしくない!

■第6章 生き抜いてきた足跡
(1)どのようにして、植物は生まれたのか?
「植物的な生き方」と「動物的な生き方」
「戦い」のなかった海の中とは?
「飢え死に」の恐怖を越えて!
(2)陸上での生存競争
「上陸」で生まれた悩みとは?
どのように、悩みを解消したのか?
悩みを克服したシダ植物
子孫を残すために!
「乾燥」との戦い
(3)陸を制した植物の武器とは?
植物が先か、タネが先か?
花粉の誕生
(4)きれいな花が咲く植物の誕生
「タネ守る体のつくり」「昆虫や鳥の力を借りる」

定価:1,100円(本体1,000円+10%税)

書籍情報

  • 発売日:2020年7月7日(火)
  • ISBN:978-4-8156-0300-7
  • サイズ:新書
  • ページ数:192
  • 付録:-
  • ①カタバミは、葉っぱを食べにくる虫や鳥を、「あるもの」で追い払っています。

  • ②タンポポの花は虫に目立つようにするため、ある工夫で花を大きく見せています。

  • ③淡紅色が美しいハナミズキですが、淡紅色の部分は花ではなく、「ある別のもの」です。ある理由で花のように見えるだけです。

  • ④白色が清らかなドクダミですが、白い花のような部分は花ではなく、「ある別のもの」です。これも、ある理由で花のように見えるだけです。

  • ⑤中国名で「七里香」とよばれるジンチョウゲですが、「香り」には「色」「蜜」にはない、「ある強力な利点」があります。

  • ⑥キンモクセイは「ある理由」があって、タネをつくりません。

  • ⑦チューリップを「タネ」ではなく「球根」で増やすのには、「ある理由」があります。

  • ⑧チューリップを「タネ」ではなく「球根」で増やすのには、「あるもう1つの理由」があります。

  • ⑨植物は太陽から発せられる「あるもの」から自分のからだを守るため、進化してきました。 写真:NASA

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著者紹介

1947年、京都府生まれ。京都大学農学部卒業、京都大学農学研 究科博士課程修了。その後、スミソニアン研究所博士研究員、甲南大学理工学部教授などを経て、現在、甲南大学特別客員教授・名誉教授。 著書に『植物はすごい』『雑草のはなし』 (ともに中公新書)、、 『植物のあっぱれな生き方』(幻冬舎新書)、『植物は人類強の 相棒である』(PHP新書)、『植物のかしこい生き方』 (SB新書) 、『入門たのしい植物学』 (ブルーバックス)、『植物の生きる「しくみ」にまつわる66題』『植物学「超」 入門』『葉っぱのふしぎ』(サイエンス・アイ新書)などがある。

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