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新幹線を運行する技術

梅原 淳:著者

超過密ダイヤを安全に遂行する運用システムの秘密

東海道新幹線は、2018年度、1日当たりの列車本数が373本もあったのだが、1列車当たりの平均遅延時分(間)はわずか「54秒」だった。この驚異的ともいえる正確な運行を実現している秘密は何なのか? 本書ではその秘密を解説していく。
東海道新幹線は、2018年度、1日当たりの列車本数が373本もあったのだが、1列車当たりの平均遅延時分(間)はわずか「54秒」だった。この驚異的ともいえる正確な運行を実現している秘密は何なのか? 新幹線は、もっぱらその速さが話題になるが、「新幹線システム」としてみたときの完成度も見逃せない。『新幹線を運行する技術』ではこの「ソフトウェア」をメインに解説していく。

第1章 精密なダイヤを実現する驚きの旅客サービス
1-01 「指定席」の管理を統括する「マルス501」とは?
1-02 インターネットで座席予約できるが「発券必須」が多い
1-03 「愛称」「号数」「列車番号」は何を意味するのか?
1-04 わずか「16分」や「12分」で折り返す「神業」
1-05 5種類以上もあるさまざまな「清掃作業」
1-06 「臨時列車」が多い新幹線のダイヤは複雑
1-07 なぜ指定席の車両で車内改札(検札)がないのか?
1-08 東海道新幹線は雪に弱いが「リカバリ力」が最強
1-09 車両故障時は正確な状態を把握することが欠かせない
1-10 「新幹線がなければ出かけない人」もいる
第2章 最適な列車本数を決め、空席を減らす技術
2-01 新開業した新幹線列車の本数の決め方
2-02 開業済みの新幹線列車の本数の決め方
2-03 「トクトクきっぷ」で空席を減らす
2-04 「団体旅客」の誘致で空席を減らす
2-05 なぜ新幹線の時刻表には「パターン」があるのか?
第3章 新幹線を高速・正確・安全に運用するシステム
3-01 車両製造には社会情勢の変化の予測も必要
3-02 「車両運用表」を見れば1日の車両の行程がわかる
3-03 「プール運用」で車両を差し替えやすくする
3-04 車両運用表は「あらゆる運用パターン」に対応
3-05 車両が受ける「仕業検査」と「交番検査」
3-06 車両が受ける「台車検査」と「全般検査」
3-07 乗務員の運用に「無理」「矛盾」は禁物
3-08 車内販売員も「矛盾」がないように運用する
3-09 列車の運転を支えるコムトラック、コスモス、シリウス、シグナス……
3-10 高速で走る新幹線の「自動列車制御装置(ATC)」
3-11 場所すら明かさない「総合指令所」は新幹線の中枢
3-12 車両の検査状況をコンピュータで管理すると何がいい?
3-13 なぜ線路や施設が受ける検査のタイミングはさまざまなのか?
3-14 線路や施設は「電気軌道総合試験車」で検査する
3-15 「営業用の車両」で線路や施設を検査することもある
第4章 遅延を減らす車両と線路の仕組み
4-01 「故障しづらい車両」を開発して遅延を減らす
4-02 スピードアップでどれだけ列車を増発できるのか?
4-03 各駅停車の列車に高性能な車両を投入する理由
4-04 「分割、併合運転」で「新在直通運転」する
4-05 駅に進入する速度が上がると時短に効く
4-06 「道床安定作業車」が運転時間の短縮に貢献したワケ
4-07 大雪でも列車を簡単には運休させない技術
4-08 大雪のときは「雪見列車」や「除雪作業車」が走る
第5章 乗客が車内で快適に過ごせるようにする仕組み
5-01 どうやって電力を車両に届けるのか?
5-02 モーターを駆動させるのは「主回路」
5-03 ブレーキやATCを制御するのは「補助回路」
5-04 周波数が異なるエリアを走る電車の補助回路の仕組み
5-05 コンセントは座席と洗面台で使える電力が異なる!
5-06 新幹線は1人1時間当たり13m^3の換気が必須
5-07 なぜ東海道新幹線ではニュースが流れなくなったのか?
5-08 車内の照明に増えてきた「間接照明」や「電球色」
第6章 乱れたダイヤを安全にリカバリする技術
6-01 新幹線を支える「ATS(自動列車停止装置)」
6-02 列車ダイヤはコンピュータと人でつくり上げる
6-03 列車ダイヤが乱れたときの対策は「2種類」ある
6-04 車両基地と駅とを結ぶ「回送列車」は減らしたいが……
6-05 東京駅に近い「品川駅」「上野駅」の存在意義とは?
6-06 「福島駅」「盛岡駅」にある東北新幹線の「泣き所」
6-07 「リニア中央新幹線」は時速500kmを5kmで止める

定価:1,100円(本体1,000円+10%税)

書籍情報

  • 発売日:2020年9月5日(土)
  • ISBN:978-4-7973-9449-8
  • サイズ:新書
  • ページ数:192
  • 付録:-
  • 鉄道ジャーナリスト・梅原 淳氏が、新幹線の裏側ともいえる「運行」についてを、わかりやすくマニアックに解説します!

  • N700系7000番台の車体を、JR西日本の車両基地、博多総合車両所の機械洗浄機で洗っているところ。自動車用とは異なり、機械洗浄機は動かず、代わりに車両をゆっくり動かして洗浄を行う

  • 雪の関ヶ原を東海道新幹線のN700Aタイプが進む。岐阜羽島~米原間の積雪は、東海道新幹線に影響を及ぼす自然災害のなかでも最も大きなものだ

  • JR東日本・E5系の運転室に設けられた3基のモニタ装置。写真左には速度とATC信号が表示され、写真中央と同じく右の2基には各車両に搭載された機器の作動状況が表示されている

  • 検査を終えた車輪と車軸には、負荷をかけた回転試験が実施される。異常がなければモータが取り付けられ、台車として組み立てられる

  • 北海道新幹線で見られる開床式の雪対策。写真中央に2組見える軌道の両脇にグレーチングが設けられていることがよくわかる。新青森~奥津軽いまべつ間

  • スプリンクラーの設置が難しい北陸新幹線糸魚川~金沢間では貯雪式と除雪車とを組み合わせて雪を取り除く
    写真:JR西日本

  • JR東海のN700系に搭載された誘導主電動機(オレンジ色の包みの下にある箱状の機器)。出力は305kWと強大だ。三相交流で作動し、回転数やトルクは電圧や周波数を変えることでコントロールされる

  • 秋田新幹線の大曲駅で見られるATS-P形の地上子。写真に見える線路のまくらぎの中央に取り付けられた白色の正方形状の機器で、車上子との間でデジタル情報の伝送を行う

著者紹介

著者・梅原 淳

1965年、東京生まれ。大学卒業後、三井銀行(現在の三井住友銀行)に入社。その後、月刊『鉄道ファン』編集部( 交友社)などを経て、2000年に鉄道ジャーナリストとして独立する。『JRは生き残れるのか』(洋泉社)、『電車たちの「第二の人生」』(交通新聞社)など著書多数。

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